はじめに
行政書士試験の商法分野では、民法との違いを理解しているかどうかを問う問題が頻繁に出題されます。その中でも受験生が苦手とするテーマの一つが「商人による寄託」です。
特に商法595条は、民法の寄託契約のルールを理解していないと正誤判断を誤りやすい論点です。
実際の試験では、
- 無償寄託の場合の注意義務
- 善管注意義務の意味
- 商法と民法の違い
- 商人に課される特別な責任
などが問われます。
この記事では、商法595条について、行政書士試験で得点できるレベルまで詳しく解説します。
商法595条の条文
商法595条は次の趣旨を定めています。
商人が営業の範囲内で物品の寄託を受けた場合には、報酬を受けない場合であっても善良な管理者の注意をもって保管する義務を負う。
ポイントは次の4つです。
① 商人であること
② 営業の範囲内であること
③ 寄託であること
④ 無償であっても善管注意義務を負うこと
行政書士試験では、この4つがそのまま問われることがあります。
そもそも寄託とは何か
まずは寄託契約の基本を確認しましょう。
寄託とは、
「物の保管を目的として他人から物を預かり、後で返還する契約」
のことです。
民法657条に規定されています。
簡単にいえば、
「預かる契約」
です。
身近な寄託の例
私たちの生活には寄託契約が数多く存在しています。
例えば、
- クリーニング店にスーツを預ける
- 修理工場に自動車を預ける
- ペットホテルに犬を預ける
- 倉庫会社に荷物を預ける
- ホテルのフロントに荷物を預ける
などです。
これらはすべて寄託契約の典型例です。
民法における寄託の原則
商法を理解するためには、まず民法の原則を理解する必要があります。
民法では、
- 有償寄託
- 無償寄託
で責任の重さが異なります。
有償寄託の場合
有償寄託とは、
預かる対価として報酬を受け取るケースです。
例えば、
- トランクルーム
- 倉庫業
- ペットホテル
などです。
報酬を受け取っている以上、
「プロとしてしっかり管理しなさい」
という考え方になります。
そのため、
善良な管理者の注意義務
つまり、
善管注意義務
が課されます。
無償寄託の場合
一方、無償寄託とは報酬を受け取らない場合です。
例えば、
友人から
「旅行中だけ自転車を預かって」
と頼まれたケースです。
この場合は民法659条により、
自己の財産に対するのと同一の注意
を払えば足ります。
つまり、
自分の自転車を管理する程度の注意
でよいということです。
善管注意義務とは何か
ここで重要なのが
「善管注意義務」
です。
正式には
「善良な管理者の注意義務」
といいます。
善管注意義務の意味
善管注意義務とは、
その職業や地位に応じて通常期待される程度の注意
を意味します。
一般人レベルではありません。
プロとして求められるレベルです。
倉庫業者の場合
倉庫業者なら、
- 防犯設備の設置
- 火災防止措置
- 温度管理
- 湿度管理
などを適切に行う必要があります。
クリーニング店の場合
クリーニング店なら、
- 衣類の紛失防止
- 誤配送防止
- 適切な保管
などが求められます。
単に
「自分の物と同じように扱った」
だけでは足りません。
専門業者としての注意が必要です。
商法595条は民法の特則
ここが試験で最も重要なポイントです。
民法では、
無償寄託
↓
自己財産と同一の注意
でした。
ところが商法では違います。
商人が営業の範囲内で寄託を受けた場合には、
有償か無償かを問いません。
常に善管注意義務を負います。
なぜ商法は厳しいのか
理由は
「商取引の安全」
と
「商人の信用維持」
です。
商人は信用で成り立っている
商人は社会的信用を利用して営業しています。
顧客は、
「専門家だから安心して預けられる」
と考えています。
例えば、
高級スーツをクリーニング店に預けた場合、
利用者は当然、
適切に管理してもらえる
と期待しています。
無料だから責任が軽いでは困る
仮に商人が
「今回はサービスだから責任は軽いです」
と言えたらどうでしょうか。
顧客は安心して利用できません。
取引社会の信用も失われます。
そのため商法は、
報酬の有無にかかわらず、
商人には善管注意義務を課しているのです。
商法595条の具体例
行政書士試験では具体例で理解すると覚えやすくなります。
例1 クリーニング店
クリーニング店がキャンペーンで無料保管サービスを実施した。
預かったスーツを紛失した。
この場合、
無料だから責任が軽くなるわけではありません。
商法595条により、
善管注意義務違反が問われます。
例2 自動車修理工場
修理工場が見積りのため無料で車を預かった。
夜間に鍵を付けっぱなしにして盗難に遭った。
これも善管注意義務違反となる可能性があります。
例3 倉庫業者
知人企業から無料で在庫品を預かった。
火災対策を全く行っていなかった。
この場合も商法595条の責任を負います。
行政書士試験の出題ポイント
行政書士試験では次の形で出題されることがあります。
パターン1
商人が営業の範囲内で無償の寄託を受けた場合、自己の財産に対するのと同一の注意をもって保管すれば足りる。
答え
× 誤り
商法595条により善管注意義務を負います。
パターン2
商人が営業の範囲内で受けた寄託については、報酬を受けない場合でも善良な管理者の注意をもって保管しなければならない。
答え
○ 正しい
今回の問題そのものです。
パターン3
商人でない者が無償寄託を受けた場合も善管注意義務を負う。
答え
× 誤り
民法659条により、
自己財産と同一の注意で足ります。
民法と商法の比較表
【民法】
有償寄託
→ 善管注意義務
無償寄託
→ 自己財産と同一の注意
【商法595条】
営業の範囲内の寄託
有償
→ 善管注意義務
無償
→ 善管注意義務
この比較は試験直前にも確認しておきたい重要ポイントです。
暗記のコツ
受験生向けに覚えやすくすると、
「商人は無料でもプロ」
です。
民法
無償
↓
責任軽い
商法
無償
↓
責任重い
この違いだけでも得点につながります。
まとめ
商法595条は、商人が営業の範囲内で寄託を受けた場合の保管義務について定めた規定です。
民法では無償寄託の場合、
自己財産と同一の注意義務で足ります。
しかし商人については例外です。
商取引の安全と信用維持のため、
有償か無償かを問わず、
善良な管理者の注意義務を負います。
行政書士試験では、
「民法の原則」
と
「商法595条の特則」
を比較する問題が頻出です。
試験本番では、
「商人は無料でも善管注意義務」
というキーワードを思い出してください。
これだけで商法595条に関する問題は確実に得点できるようになるでしょう。
